(昭和55年) |
『これは美味い!』と感じて食べた物は、大そう良く消化吸収されます。 美味いと思わないのに、理性で止むを得ず食べた時は、消化率がぐんと下るから妙です。(食べないよりはましですが・・・・) 全く嫌いな物を、叱られて嫌々しぶしぶ食べた場合、その消化吸収率は極端に少なくなり、食べても余り役に立ちません。 私は、野菜好きの学生と、野菜嫌いの学生を、それぞれ五人づつ集めてレモンを丸のまま皮ごと食べさせ、レモンの含有するビタミンC(アスコルビン酸)の消化吸収率を調査した事があります。 野菜好きの学生と言うのは、食事のメニューの中に野菜が入っていなければ、それは人間の食べる食事ではない、肉はなくても辛抱できるが、野菜が無い食事は呑みこむのが苦痛になる、と言う程の野菜好きです。 一方野菜嫌いの学生たちは、野菜なんて、まあ最後のお茶漬けに漬物でもあれば良い位で、無ければ無いで欲しくもない、何て言ったってビフテキだよ、と言う類の若者たちでした。それら全員に、ほぼ同じ大きさのレモンを二個づつ与え、丸ごと食べてしまうよう命令しました。 野菜好きの学生たちは、レモンに食塩を振りかけて『こりゃ結構いけるぜぇ』と笑いながら、うまいうまいとバリバリ食べてしまいました。その小気味良さに引き比べ、野菜嫌いの学生たちは殆ど泣き叫ぶ程のパニック状態、『うわぁ、酸っぱい!たまらん!ギャーッ!』と顔をしかめて嫌がり、涙を流して苦しみながら、けいれんも起こしかねぬ騒ぎようでしたが、強制的に少しも残さぬよう食べさせました。 翌日から三日間、彼等の大便の中に消化されずに排出されて来た《ビタミンC》を検べたのですが、『うまい!』と喜んで食べた野菜好きの学生たちの便にはビタミンCは検出されず、野菜嫌いの学生たちの便は一眼で不消化便とわかるほどで、大量のビタミンCが消化吸収されぬまま排出されていたのです。 私は、『うんこ博士』などと学生に陰口を言われる程、消化吸収と『食べる時の美味しさや、気分』などの関係を研究しましたが、結論は明白でした。 嫌な物を無理に食べたり、怒ったり悲しんだりして食べると、下痢をしかねぬ程に消化が悪くなります。 食物は、楽しく『うまい!』と感じて食べた時、見事に消化吸収されています。 野菜を食べる人は健康で長生きすると解っていても、『自分の心が食べたくなり、食べたら美味しかった』のでなければ、百%役に立っていないのです。 ですから、野菜を好きになるか否かは、大変重要な意味がある訳で、特にすでに何かの慢性病で困っている人などは、早急に偏食のクセを改めないと、クセと言うものは年月を経るほどに直り難くなるものです。 梅雲丹を買うのが気に食わぬ方は、毎食梅干しを1ヶ食べて、その種子を割って核を食べてみて下さい。一ヶ月くらいすると、少しづつ食の好みが変わって来るのが自覚されるでしょう。 |